杵屋 勝志緒(かつしお)
私が長唄三味線に出会ったのはコロナ禍真っ只中の2020年。ちょうど社会人1年目の時でした。勝くに緒先生が講師を務める「3ヵ月で落語の出囃子に挑戦!」というワークショップに参加したことがきっかけです。
邦楽なんて全く触れたことがないし、弦楽器(三味線は打楽器でもありますが)の経験も皆無。簡単な練習曲もまともに弾けず諦めかけたところからスタートしたものの、だんだんとコツをつかみ、なんとか課題曲を弾けるようになりました。
3ヵ月の講座が終わる頃には三味線に愛着が湧いて手放すのが惜しくなり、まずはグループレッスン、次に個人レッスンへと進み、長唄三味線歴5年目の2024年に名取試験合格となりました。
入門当初は初めてのことに黙々と取り組むことがリフレッシュになり楽しいと感じていましたが、いまは日に日に上がっていく「弾ける」のハードルとの闘いです。
音色、ノリのコントール、奏者同士の一体感……音楽としてのクオリティを上げていくには、まだできないことばかり。しかし、意識すべきポイントが増えていくことは必ずしも苦しいものではありません。むしろ自分の状態を客観的に捉えて冷静に演奏することに繋がるのだ、と気付きはじめました。
いよいよ自らを「ひよっこ」とも言っていられなくなってきましたが、全くの初心者だった時代がまだ遠くない今だからこその視点も忘れずに、長唄の普及に貢献できるよう益々精進します。